
良作!
暗幕のゲルニカ
ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレータ ー八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。
-あらすじより
ちょい厨二っぽい文体が良いよね
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 2, 2021
この作者さん、本当に絵画が好きなんだな
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 2, 2021
相変わらず、緻密に練られた絶妙なシナリオ
これは面白いな〜
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 2, 2021
“「この絵を描いたのは、貴様か」
「いいや。この絵の作者はーあんたたちだ」”これは鳥肌
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 2, 2021
すごい臨場感
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 3, 2021
やっぱり歴史はおもしろいな
ピカソの戦いなんて、どの本でも見たことないから新鮮
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 3, 2021
後半からの熱量がすごい
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 3, 2021
いやこれ本当すごい
最後のヨーコのスピーチで泣きそうになった「芸術は武器」なんて考えもしなかった思想だから、またこれからアートを見る目が一段と深くなる気がする
素晴らしい作品!最高!
— 高橋幸太 (@ICehkceyBbmZHoI) August 3, 2021
私はこれまで、絵画の良さが正直わからなかった。
好みもあるかも知れないが、単純に、わかりやすい魅力がなかったからだ。
「上手いねー」とか、「色鮮やかだねー」とか、本当にずぶのド素人の感想しか出て来ず、これまでもっぱら饒舌にしてくれるのはアールヌーボーに代表されるガラス工芸だけ。
いろいろと展示会は見て周っているのだが、立ち止まるのは絵画よりもそういった「形のある造形品」ばかりだった。
実際に長野県にある北澤美術館に行った記事もあるので、ぜひ見て欲しい。
彼らアールヌーボーのアーティストたちが創りあげるガラス細工の数々はどれも繊細で、本当に息を飲むほどに美しいのだ。
とにかく作品の1つ1つが本当にファンタジックで、絵本やアニメに出て来る魔法使いが放った魔法みたいな、とにかく視覚的にとても心地よい驚きと感動をもたらしてくれる。
ここまでインパクトがあったのは、芸術家たちの苦労と技術と想像力が生み出した芸術の価値が、スッとわかりやすく入ってきたからだろう。
しかし、絵画は違う。
単純に、絵画は立体感に欠けてしまうため、どうしても感動が鈍くなってしまうのだ。
芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。
―パブロ・ピカソ
この物語は、よくありそうな、言わばありきたりなこの文句で始まる。
だが、この物語は本当にこの一言に集約されている、文字通り「戦いの物語」だった。
この小説は、近代美術館で「ピカソの戦争」という展示会を企画する日本人女性「八神瑤子」と、ピカソの愛人で写真家の「ドラ・マール」、この2人の視点で進んで行く。
テーマとなるのはタイトルにある通り、ピカソの代表作である「ゲルニカ」だ。
この作品は表紙にあるものそのままなのでご覧頂きたいが、とてもじゃないが正直よく理解できない。
色彩もモノクロームで、なにやら不気味で人外な雰囲気を匂わせる。これはホラー画かなにかか?と思う人が大半だろう。
もちろんこれはホラー画ではなく、当時ナチス軍に空爆されて火の海になったスペインの都市「ゲルニカ」を描いたもの。
「戦争をやめろ」という、なんとも一直線なピカソのメッセージなのだ。
そしてこの作品が、当時も今も、世界中で物議を醸し出すことになる。というのが、この「暗幕のゲルニカ」という物語だ。
ここから、八神たちとドラたち、それぞれの戦いが繰り広げられるわけだが、これがまたついつい貪り読んでしまう。
とにかく原田マハさんの描く物語は、なんとも臨場感に溢れているので、まるで映画を観ているような錯覚を覚える。
映画どころか、ピカソが憤怒して新聞を破るシーンなんか、まるでその場にいるようだった。
私たちは権力に屈しない。命を懸けてでも、絶対にこのメッセージを世界に発信する。
ストーリー全体を通して2人は戦い続けるのだが、両者の戦いが本当に熱を帯びていて、予期せぬ展開にハラハラしながらも、最後まで一気に駆け抜けられる爽快感も持っている。
私はもう、「絵画は自分に合わないんだろうな」と半分あきらめていたが、この作品を読んでから「ゲルニカ」だけは特別な感情がわいてきた。
ピカソの生きた時代、ナチス軍に蹂躙される故郷に強く影響されて発信されたその「反戦」のメッセージとピカソの戦いが、モノクロームだったものに色を与え、平面だった絵に立体感をくれたからだ。
きっと、どの絵画にも現れる現象であり、それこそ絵画の魅力なんだろう。
ただの平面に描かれた絵が動き出すのは、その裏にあるメッセージを体感できた時なのだ。