
この人やっぱすごいわ。
廃墟の白墨
ミモザの父・閑に封筒が届いた。チョークで描いた薔薇の絵の写真、裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。廃墟と化した明石ビルに行った彼を三人の男たちが待っていた。男たちは語りはじめる。哀しい少女・白墨の切なく凄まじい物語を──。
by Amazon
いや~、やはり遠田潤子さんの作品は素晴らしいですね。
今作も期待以上の衝撃をそなえた1冊となっておりました。
さくっとおすすめポイントをレビューします!
物語のクオリティ
これはもう遠田さんの作品すべてに言えることですが。 ←
今作は特に、物語のクオリティが神がかっております。
話自体は、「父親が昔住んでいたビルで一体なにがあったのか?」という、とてもシンプルなものです。
しかしこれがまた読んでいくと、むちゃくちゃ深い物語が待ち受けているわけですよ。
それを、プロローグから一気に引き寄せて、そこからじわじわと物語の世界に引き込んで行く…という手口はもう神業ですね。手口いうな
「ビルの女性管理人とその娘、4人の住人それぞれの物語を中心に話が進んでいく」…というスタイルなのですが、これがまた掘れば掘るほど物語にどっぷり浸かって行ってしまう展開に釘付けになってしまうんですね~。
エロ展開あり、ラブストーリーあり、ミステリーありと、私の大好物が詰まった1冊です。 ←
妖艶な世界観
物語の舞台となる、この「明石ビル」には主人公の父親を含め4人の男たちと、管理人、その娘の6人が生活していたわけですが、これがまたね。
エロいんですよ。
なんとその管理人の女性は住人の男たち全員と寝てしまうという徹底ぶり!なんのや
「若干オツムの足らない女性」という設定に加え、しかも外にも想いを寄せている男がいて、その男もちょいちょい部屋にやってくるわけですよ。
こんなん読んじゃうよね!(´∀`*) ←
しかも1970年代という、近代化に向けて進んでいた日本特有の雰囲気もあって、それがさらに妖艶な世界観を作り出しております。
現代にはないエロさがまた一周回って新鮮に感じるから不思議ですよねえ。
とまあ、AV業界もびっくりの神設定(?)なのですが、エロだけじゃなく、ここにそれぞれの「悲しさ」みたいなのが含まれてて切ないんですよね~。
ここがまさに、この作品のポイントなのかなと。
管理人の女性は他に好きな男性がいるのですが、住人の中にはガチ恋してる人もいて、手が届いているのに届いていないみたいな感覚を味わうことになるんですよ。
この嫉妬感。これがもうもどかしくて切なくてね。
そんな「エロくて切ない物語」も、今作のスパイスであることは間違いないでしょうね。
暗くて美しい、愛の物語
そして、これですよ。
ところどころに「愛」が存在してるのがまた憎いんですよね!
ストーリー自体は決して明るくはありません。
全体的に冷たくて暗い雰囲気なのですが、どこか「ぽっ」と温かみが灯るような愛を感じる瞬間がちょこちょこ用意されてるわけですよ。
これがもう本当に心を揺さぶって来るんですよね~!
それは、恋人だったり、親子だったり、友人だったりするわけですが。
ここらへんの描写が本当に天才的だなと。
そして終盤からラストに向かって行く時の、なんとも言えない「やりきれなさ」
そして読み終わったあとの、鳥肌、そして余韻。
これを味わえるのは、暗くて、切ないけれど、どこか美しい。そんな物語だけが成せる作家さんの「料理の腕前」なんですね。
まとめ
絶対に損しない1冊です。胸を張っておすすめできますね。
遠田潤子さんの作品はこれで全て読みましたが、1・2を争うほどの良作でございました。
暗くも美しい愛の物語に心を揺さぶられまくっちゃってください!(´∀`*)
一気読み必至です。おヒマつぶしに、ぜひ。