
考えさせられますねえ。
聖なるズー
犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」。
性暴力に苦しんだ経験を持つ著者は、彼らと寝食をともにしながら、
人間にとって愛とは何か、暴力とは何か、考察を重ねる。
そして、戸惑いつつ、希望のかけらを見出していく──。by Amazon
パンドラの箱を空けてしまった気分です。 ←
動物とセックスする人たちがいるのはなんとなく知ってましたが、今まではどこか遠い空の下にいる変態たちのお話だと思ってました。言い方
でもこうしてノンフィクションで読むと、その存在をより身近に感じますよねえ。
しかしながら、本書はいわゆるマニアックなAVだったり、やたら露出の多い装備の女戦士がオークやゴブリンに捕まって「くっ…殺せ」なんて展開があるアニメなんかでやってるような「獣姦」と呼ばれる軽い感じではなく長い、もっと深く「愛」について考えさせられる1冊だったから驚きなのです!
これはすごい本ですよ。
さくっと見どころをレビューします!
「恋愛」ってなに?
「動物とセックスする人たちを取材する」って聞いただけでもだいぶ気持ち悪いですが()
そんな表面上のことはどうでも良くなるくらい、「愛」についていろいろと投げかけて来るものがあるのがなんとも迫力があって面白かったんですよね~。
- 恋人からDVの被害に遭っていた著者さんが「愛」について考えだす
- 「獣姦」について調べてみたら?とすすめられる
- そっちの世界には、知られざる「愛の世界」が広がっていた!
要するに、本書のポイントはこれかなと。
「獣姦」って聞くとどうしても「無理矢理」とか「おもしろ半分」とか「動物虐待」ってイメージがあると思うんですよ。
「動物に意志はあるのか!」とか「それは強姦じゃないのか!」とかね。
もちろんそうではなく、彼らはきちんと「心を通わせた恋人」であるということなんです。
セックスに関しても、無理矢理するのではなく、彼らはお互いに「したい」と思わなければ事に及ばないんですね。
動物って、きちんと自分の感情を表現するじゃないですか。
嫌なものは嫌。好きな物は好き。これらを態度できちんと表現するんですよ。
しかし、動物性愛者(ズー)の方々はそれだけじゃなく、「満足している」や「イライラしている」などの感情が詳細に理解でき、さらには犬も「セックスしようよ!」と誘ってくるのがわかると言うのです。
ここら辺を語るズーの人たちがね~、なんかもうひしひしと「恋」とか「愛」を感じさせるもんだから、深く考えさせられるんですよね~。
なんなら、人間同志のカップルよりもきちんと恋人同士として成り立ってんじゃね?って感じさえしてくる。笑
セックスってなに?
繁殖行動です(´∀`*)えっちなことを聞くんじゃない!
まあ、そんなこと言ってるから浅く見られるんですけども。 ←
実際、一昔前までは「生産力」「労働力」=人口だったので、それこそ「子供を作る」ことに意味があったわけですよ。
しかし、現代はテクノロジーが労働して生産してくれるので、人口は別に増えなくていいんですよね。
むしろ、地球環境のことを言えば、減った方が良かったり()
そんな時代になってきて、「セックス」の意味合いも徐々に変わって来てると言いますか。
今までは「子孫を残す」という繁殖行動でしかなかったわけですが、その必要がなくなってきて、今は「愛情表現」や「コミュニケーションツール」の意味合いの方が強くなってるんですよね。
LGBTの方々がまさにそうで。
そしてさらに、現代には愛を感じるのに「セックスそのもの」が必要ない人たちが出てきているんですよ。
アニメキャラに恋をする人たちなんかがそうですね。
まさにそれの延長線で、本書にはいろんな「動物性愛」の方々が登場しますが、この人たちは単純な「動物とセックスするのが好き」な人たちではないんですよ。
セックスなしで恋愛している。心が通っている。そんな状態の人もいるのです。
性DV被害者である著者さんの視点から見る、この「セックスなしでも満たされてる感」がなんとも「愛」について考えさせられる要素だったりするんですよね~。
激動のノンフィクション!
そうした動物性愛者たちを取材したルポなので、セックスの話はかなり生々しいですが、ノンフィクションならではの迫力にはやっぱり圧倒されますね。
もちろんマイノリティな人たちなので、私たちが普段接触することはないですし。
そんな内容なので、人によっては気分が悪くなったりするとは思いますが、気が向いたら一読してみても良いかなとは思いますね。
かなりいろいろと考えさせられた1冊です。
知らない世界を見て、自分の見解も広がった良著でございました。
おヒマつぶしに、ぜひ。