
すごいこの本。
善と悪のパラドックス
人間は所属する社会集団内で争いを避ける傾向があり、多くの野生の哺乳類に比べて、非常に寛容だ。しかしそのように温厚でありながら、別の面では非常に攻撃的な種であるのはなぜなのか。チンパンジーとボノボを分けるもの、またネアンデルタール人とホモ・サピエンスを分けるものは何か──。アフリカで多くのチンパンジーの生息地を渡り歩き、フィールドワークを重ねた人類学者が、人類学、生物学、歴史学、心理学の新発見にもとづき、人類進化の秘密に迫る。
by Amazon
スティーブン・ピンカー氏の「暴力の人類史」を読んでから読むとむちゃくちゃおもしろいです。
暴力の人類史を読んで、「あれ?」ってなったところをがっつり分析・解説してくれた!ってのが本書「善と悪のパラドックス」って感じですかね。
さくっと見どころをレビューします!
確かに暴力は減っている。だけども…?
スティーブン・ピンカー氏の著書「暴力の人類史」では、歴史を遡って見れば現代は暴力が減ってかなり平和ですよ!ってことがデータを照らし合わせて論じられております。
確かに、理不尽な処刑や戦争などの殺戮は減ってはいるけども、裏では増えている暴力もあるんですね。
それがいわゆる、「SNS叩き」に代表される「間接的な暴力」によるものです。
私は、ここが増えている以上、ある意味「平和ではない」とどこかでひっかかってたんですよねえ。
しかし、本書を読んで、それが解決しました。
これは単純に、
- カッとなってつい殺してしまった!に代表される「反応的攻撃性」が減って
- 計画的に殺人を計る「能動的攻撃性」が増えた
ってことなんですね。
つまり、暴力の形は「本能的な攻撃」から「頭を使った知的な攻撃」に姿を変えたのです。
自己家畜化がもたらしたもの
我々ホモサピエンスも、元を辿ればチンパンジーと同じいわば「猿人類」で、殴る・蹴る・噛みつく・ひっかくなどに代表される「武力による直接的な暴力」にものを言わせていました。
しかし、これは進化と共に徐々に減っていきます。
その一番の原因として、「自己家畜化」が挙げられます。
「自己家畜化」とはつまり、「道徳やルールに従順になる」ということですね。
自分の本能だけに従って動くより、周りと協調した方が効率的!ってことに気付いたのです。
これが、人類の発展に大きく貢献してきたわけです。
しかし、これがまた危険な思想を生み出すことになっていきます。
それが、「暴君の排除」、いわゆる自分勝手なやつは許さない!という社会的な思考ですね。
ここから、暴力は集団化していくのです。
善と悪のパラドックス
そして、本書は半分くらいを使って、暴力の歴史や他の動物の生態を分析しながら振り返ってるのですが、ここであらためて「あれ?」ってなるわけですよ。
- カッとなって殺した!みたいな自分本位な殺人がなくなった
- 人を裁くなら集団で裁判しましょう。これで平和。良かったね!(´∀`*)
でもこれ、ほんとに良かったの?ってことですね。
道徳やルールから、裁判や処刑が生まれて、現在の人類はある程度の秩序を保ってるようには見えますよね。
しかし、その裏では暴力は形を変えているだけなんじゃね?ってことが伺えるわけです。
ここら辺の話を、
- ボノボとチンパンジーの生態や研究
- 過去の倫理観
- なぜ私たちは能動的攻撃性が強くなってきたのか?
などのデータや考察を交えて書かれてるのが本書「善と悪のパラドックス」って感じですね。
まとめ
これは本当に内容を説明するのが難しい。 ←
考察できる情報がむちゃくちゃ多いから。笑
記事で伝わるかどうかわからないけど、とにかく「おもしろい1冊です」ってことですよ。安易
こーゆー考察系の本は、人によって感じ方や捉え方が違うはずなので、それがまたおもしろいところではありますね。
あなたは
- 他人に寛大で温厚な一面
- 道徳やルールに反するものに対する狂暴な一面
この2つを併せ持つ人類の暴力を基とする善と悪を、どう見て、どう感じますか?
ついつい読みふけってしまった良著です。
おヒマつぶしに、ぜひ。