【小説】原田マハ さくっと「小説・ノベルズ」

【小説】大人の気分を味わえる極上のアートミステリー―『楽園のカンヴァス』

投稿日:2021年8月2日 更新日:

 

エレガント!

 

楽園のカンヴァス

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

-あらすじより


大人のミステリーです。

別にえっちなわけじゃないぞ!(´∀`*)残念だったな!

 

私自身、アートにはこれっぽっちも興味がなかったのだが、ひょんなことから美術館巡りが趣味になった。

「ひょんなこと」とはズバリ、「大人になりたかった」だ。

なんとなく、私の中では絵画の世界は上品で煌びやかな「大人の世界」だった。

 

今でも時間が空けば各地の展覧会を見て周っているのだが、やはり美術品のおもしろさは「ミステリー」にあると思う。

彼らはどんな思いで、どんな状況で、どんな景色を見ながら、その作品を創ったのか。

そもそも、その作品は本当に彼らが作ったのか。

跋扈する贋作、謎めいたメッセージ性、なぜ、その作品を創り、その作品にそのアクセントを隠したのか。

それはもちろん、本人にしかわからない。

作者がいない今、それは解かれることのない永遠のミステリーなのだ。

 

そして、もう1つの魅力的なミステリーがこれ。

現代に至るまでに、その作品にはなにか語られるべき「物語」があったのか?

 

この作品「楽園のカンヴァス」は、アンリ・ルソーの描いた作品「夢」が本物か偽物かを見極める対決がメインの物語だが、ここにアート界のミステリーが加わる。

「夢」の下には、パブロ・ピカソの失われた作品「ピカソ・ブルー」が描かれているのではないか?

 

気になって調べてみたがそんな事実はないみたいだが、なんともおもしろい仕掛けである。

ピカソブルーを見るためには、ルソーの絵を削るしかないという、文字通りの究極の選択。

 

もちろん、そこも「想像」でしかないのだが、ここまで壮大で美しいミステリーは見たことがない。

 

ティム・ブラウンと早川織絵の対決もさることながら、ルソーやピカソが生きていた時代までもが浮かんできて、当時のサロンの様子までイメージ出来てしまうのも見どころ。

文学でありながら、超視覚的!

 

美術界や経済界の資本主義的な思惑、キュレーターや研究者が持つアートへの愛、それぞれの秘めた物語

これらが上手く混ざり合った極上のミステリーだなと。

 

誰も殺されないミステリーも、たまには良いもんですね。←

 

「想像」というのは、いつの時代も私たちを楽しませてくれるエンターテイメントなんだなとつくづく感じた作品です。

 

いつか、タイムマシンが開発され、過去のアーティストたちを覗き、現代に残るアートの全貌が明らかになる日も来るだろう。

でも、すべての謎を解き明かしたい気持ちももちろんあるのだが、少しだけ、「そのまま」にしておきたいという気持ちもある。

全貌が明らかになってしまったら、「想像」で生み出した物語が楽しめなくなってしまいそうだからだ。

歴史のミステリーは、無限に想像と物語を生み出せる源泉なのかもしれない。

 

ついついそんな大人なことを考えてしまう、極上の1冊でした。(

おもしろかったです。おヒマつぶしに、ぜひ。

 

 

 

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